ふるさと 1.ストライキ





 天気予報がはずれて、ほっとしたような、残念なような・・。
 私は、雲ひとつない、澄んだ青い空を見上げてから・・ざわざわした人の多さに軽くため息をもらした。
 隣りに並んで歩いている新一は、ちょっと眠たそうな顔をしてる。
 事件を解決して帰ってきたのが昨日の夜遅くだったから。

 にもかかわらず。
 こうして私と朝から出かけている理由は・・、
 私にははっきりとは言わないけれど、たぶん、理由なんてひとつしかない。
 こないだの約束を、例のごとくドタキャンしたため。
 昨日の夜、戻ってすぐだったんだろう。
 疲れているのを隠すような声音で、明日一緒に出かけよう、と電話してきたあの時。
 嬉しかったけど・・、
 テレビで見た天気予報では、朝から雨だといっていて。
 それなら、それでもいいと思ったんだ。

 嬉しいけど・・ゆっくり休んでほしかったから------。

 でも。
 幸か不幸か、天気予報は・・はずれた。

 「すごい人だね・・」
 「・・そーだな・・」
 休日の街は、いつもと違う色をしてる。
 「・・ごめんね。こんな人の多いところで付き合わせちゃって」
 人の多さにびっくりしているのか、それともやっぱりまだ眠いのか・・、
 いまいち反応の鈍い新一に、私は遠慮がちに謝る。
 「なんで謝るんだよ。いつもドタキャンばっかで迷惑かけてるんだし・・気にすんなよ」
 ようやく”らしい”笑みを私に向けて、新一は軽く言ってくれた。

 ふと、よぎる。
 今日もまた、突然呼び出されたら、やっぱり行ってしまうのだろう。

 私と事件。
 天秤に掛けたら、どうなる・・?

 怖くて。
 今はまだ、自信がなくて。
 訊けそうにもない。

 この、
 宙ぶらりんな関係を、なんて呼んだらいいんだろう・・・・・・。

 人混みに、少しふたりの距離が開く。
 「ほら。はぐれるなよ」
 新一は、なんの疑いもなく。
 いつものように、手をさしのべる。

 一瞬の、ためらい。

 だけどやっぱり・・。
 私もいつものように、手を差し出した。
 その手を、新一はゆっくりと握る。

 また。
 なぜだか、ためらって。

 私は、握り返せないままでいた。



 ------ドンッ!!

 急に、誰かとぶつかった拍子に、手が離れた。
 私がいつもみたいに、握ってなかったからだ。

 振り返った新一の顔を、一瞬見た。

 ズキン。

 なぜだか、胸が痛い。



 追いかけなくちゃ、いけないのに。
 私の足は、どんどん逆行していく。

 もう、新一の姿を見つけることが、できなくなっていた。

 気がついたら。
 走っていた。

 ごめん・・。困らせて。
 わかってるよ。いつだって。
 だけど、不安になるの。



 ねぇ。
 自分勝手で、わがままで、ごめん。
 でも・・。
 真実を追い求めてる、あの瞳で。

 お願い、

 私のことも、探して------。






tcn...

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