夢みるお年頃




*以下のようなものが苦手な方にはあまりオススメできません;;
・ミーハーなレインちゃん(微妙に壊れ気味(^^ゞ)
・月と青が会話している
・月赤
…つまりそういうお話です(爆)。大丈夫!という方はどうぞ。
前置きを無視しての苦情はお受けできません;;





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 気がつくと、差し出されている手が、ふたり分。
 きょろきょろと視線をさまよわせているうち、重なるようにして声が聴こえる。

 「「お手をどうぞ、プリンセス・レイン」」

 みてみれば、憧れのプリンス・ブライトと、クールで評判なプリンス・シェイドが手を差し伸べているではないか。
 「やだっ。ふたりから誘われちゃうなんて〜…」
 おろおろとしたところで、ふいにふたりの姿がぼやけ、やがて霞んでいった。


 「……あ、あれっ?なあんだ…夢…びっくりしたぁ…」
 朝日の差し込む部屋で、目が覚める。
 ふと顔を向ければ、隣のベッドではまだファインがすやすやと寝息を立てていた。




*****


 「ほんとうに、変わった夢だったわ…わたしったら、もう…」
 パーティ会場で少しひとりになっている間、レインは先日見た奇妙な夢を思い出して、ぶんぶんと首を振っていた。

 …と、聞き覚えのある声音が耳に響く。

 「…プリンセス・レイン」

 低くて、涼しげなよく通る声だ。
 はっとなってみれば、月の国のプリンス・シェイドが手を差し出している。

 「…うそっ。やだ、ほんとうに…っ!?
 だめよ、シェイド!あなたったらファインという子がありながら…!」
 たしなめるように一気にまくし立て、はあ、と息をついて見返してみると、目の前の背の高い少年はあっけに取られた表情でこちらを見ていた。

 「…は?」
 「…え…だ、だから…」
 「いや…。落し物を」

 ………。
 よくみれば、いつの間に落としたのか、彼女のハンカチーフを手にしている。
 勝手な妄想に、レインは沸騰したように赤面した。
 「きゃ〜〜っ!な、な、なんでもない、なんでもないのっ!」

 わたわたとしているところへ、誰かがすっ飛んでくる気配を感じた。
 「れ、レイン〜!さっきの、何!?どさくさに紛れて何いってるの〜!?」

 自分以上に顔を真っ赤にさせて飛んで来たファインが、がし、とレインの肩を掴んできた。
 その顔は今にも羞恥で泣き出しそうなほど必死の様子で、後ろにいるシェイドに見向きもしない。
 「…ど、どさくさって…?」
 ぱちぱち、とレインが目を瞬いて小首を傾げると、やれやれ、という風情でふたごを見守っていたシェイドが一つ息をつき、ふいに口を開いた。

 「確かに、そうだな」

 それは、ファインの言葉に同調しているように聴こえる。
 彼女もそう思ったらしく、ようやく彼に向き直り、
 「そうだよね、もう、レインったら変なこと…」
 最後の言葉だけが、突如しゅん、と小さくなっていく。心なしか、口がへの字になってしまっているようだった。

 けれど次の瞬間、少年が口にした言葉は、ふたりの予想を超えるものだった。

 「…確かに、オレにはお前がいるな」

 今までと違う、穏やかで真摯な瞳をファインに向けながら、ほんの少し笑みらしいものを浮かべて言う。

 「あらぁ、そうよね〜」
 うふふ。とレインは夢みるようにふたりを眺める。

 そんなレインとは対照的なほどに、ファインはようやくおさまりかけていた表情をまたもや急激に沸騰させた。
 「…な、…な、…な…」
 口をパクパクさせて、ろくに返答もできないのもかまわず、シェイドは彼女の手を引いた。
 「ほら、行くぞ」
 「…え、えっ!?行くって…」
 「オレと一緒じゃ、不満なのか」
 少しばかりぶっきらぼうになった声のトーンに驚いて、ファインがぶんぶんと首を振っている。
 「そ、そうじゃなくて…。あの、あの」

 ずるずると手を引かれていきながら、まだファインは気を動転させたまま、
 「な、なんで、いきなり、どうして〜〜??」
 と困惑の声を上げているけれど、ふたりの姿が遠ざかるのに比例して、その声もだんだんと小さくなっていく。

 「プリンセス・レイン。踊りませんか」
 遠ざかる二人の背中を見送って、手をひらひらさせていたレインの鼓動が、ドキリ、と鳴った。
 「ブライト様」
 ぱっと顔をほころばせると、ああ、やっぱり、そう。
 と、レインはひとり、心のうちで想う。

 プリンス・ブライトに手を引かれながら、しかしレインはふと、見てしまった夢を申し訳なく思い、そのままうっかり夢見がちなモードに入った。
 「はあ〜…。でも、たとえ夢とはいえ、ほんの一瞬でもどちらの手を取ろうかと考えてしまったなんて…。
 許して、ブライト様〜」
 「…?どうか、されましたか?」
 まじまじと見つめられて、レインははっとわれに返った。
 「…えっ!?な、なんでもないんです…っ…」

 そうして心のなかで、もういちど思い返す。
 やっぱり夢のなかでも、きっと彼の手を取ったのだろう、と。





FIN.






お久しぶりのふたご姫小話です。元ネタはクリスマスCD4曲目(^^ゞ
しかも、多方面の方にご不快に思われるかもしれないというなんともな…(汗)。
読んでくださった方がいらっしゃいましたら、ありがとうございましたv
(2005/11/26)