シンパシー
2度と同じように時は流れない。 もちろん。 ひとつひとつの時間を、今までよりずっと大切にしてきたつもり。 それでも。 知らず知らずのうちに、幸せの居心地に慣れていく自分がいるなんて・・・・・・。 新一が帰ってきて、早くも数ヶ月が過ぎようとしていた。 お互い、何も言わなかった。 気持ちがお互いにばれているようなものだったけれど。 あえて何も言わなかった。 言葉にするよりも。 今までの分を取り戻すように、二人で過ごしてきた。 でも・・。 それはちょっぴり建前かもね・・。 ほんとは。 お互いタイミングを逃してしまっただけともいえる。 最初の一ヶ月は、怖かった。 もしかして、また・・。 そう考えると、どうしても離れたくなかった。 だけど。 次第に怖さが薄れると。 大丈夫なんじゃないかな・・って思えてくると。 緊張感が解けてきて。 今はもう。 帰ってきたときの、あの切迫感はもうなくて。 いつでも気持ちを言葉にできるとどこかで思い込んでる自分がいる。 たとえどんなに平凡な時間でも、決して戻ってこないのに・・・・・・。 誰もいない教室で、一人頬杖をついて待っていた。 新一は、帰ってきてからというもの、あらゆる特別の追試を受けていた。 今日は先生との面談の日。 祈ることしかできないけれど。 新一ならきっと大丈夫だと信じてるけど。 今日、これから先、私たちと同じように進級に向けて学校生活が送れるかどうかの判断が、とうとう下されるのだそうだ。 瞼を閉じて、思い返していた。 新一が帰ってきてからのことを。 ゆっくり、ゆっくり、大切なときを思い返していると、どれもがかけがえのないときだと思い知る。 そうしてゆっくり、扉が開いていくように、想いの先にある答えを、見つけられる気がした。 幸せの居心地がよすぎて。 緊張しなくなること。 それは・・大切なときを、忘れてしまったわけじゃなく。 あなたの隣にいる私が、どんなに自然に私らしくいられたかということなのだ・・と。 私はあなたを、あなたらしくいてもらえるように、支えていけるだろうか? 重荷なのではなく、 当たり前すぎるくらい、隣にいられるだろうか・・・・・・。 新一が帰ってきて、二人で逢うたび、時々自分でも恥ずかしくなるくらい。 飽きられるんじゃないかと思うくらい、見つめ続けていた。 離れても、いつでもあなたを瞳に描けるようにと、祈りながら------。 憶えている? 帰ってきた新一を見たとき、私は感じたの。 その瞬間に、2人の間に何かが走った気がした。 同じ何かを、思い描いている気がした。 あの日、私たちはきっと、強く共鳴していたはず・・・・・・。 私は忘れない。 だからあなたもどうか、憶えていてね。 もう2度と手放さないと思ったあの日を。 もう2度と見失わないと誓ったあの瞬間を。 初めて、確かに二人で同じ未来を描けることを願った、 あのときを------。 ガラッと音がして、教室のドアが開いた。 「・・蘭。まだいたのか・・?」 「待ってちゃ・・ダメだった・・?」 ちょっと心配になって、俯き加減に訊いてみた。 「そーじゃねーよ。悪いな・・遅くなっちまって」 「なに言ってるのよ。コレくらい・・」 今までに比べたら。 それは、言葉にしなかった。 でも、何も言わなくても、わかってしまったようで、新一は苦笑していた。 そうして、自信に満ちた笑顔を向けて頷いた。 大丈夫・・だったのだ。 私も笑顔で応えた。 あの日・・みたいだね。 また一つ増えた、共鳴する瞬間。 心の中で、もう一度問い掛けた。 「あの日のことを、憶えていてね・・」 「忘れるわけねーだろ・・」 そんな答えが返ってくるような気がして。 私の心の中に、あたたかい風が、吹いた。 FIN. |
モノローグな感じで書きましたが、結局意味不明なお話に・・(汗)。 言葉は必要なときといらないときとが難しいな・・と思うこのごろです。 |