Shoothing star





 わかってるよ。

 知ってるよ。

 わたしの願い事は、いつもひとつ。

 今夜は、あなたの願い事、わたしも星に祈るから。

 だから、
 そばにいてね――――――。





 「わあ・・。ここまでくると、ほんとに真っ暗ね・・」
 夜の冷気に身を竦めながら、わたしはあたりを見回した。
 「だろ?でも、これでちょうどいいんだよ」
 新一は振り返って笑いかけてくれたけれど、その暗さであまりよくは見えない。
 「ほら、冷えるだろ?」
 あっ・・・・・・。
 そっと引き寄せられて、新一の腕の中に包み込まれた。
 「あったかい・・」
 ほんとうに、あったかい。
 トクン、トクン、と。
 波打つ音が、伝わってくる。

 「よく見えるかな・・?」
 「きっとな」
 そうして、ふたりでそっと夜空を見上げた。





 昨日の深夜からからはじまった天体ショー。
 いちばんよく見える時間帯と聞いて、わたしと新一は、しし座流星群に、出逢いに行った。
 街の中では星はよく見えない。
 こんな時間に、灯りの少ないはずれの公園に行くなんて、はじめてのこと。

 公園のベンチに腰掛けて、時を待つ。

 息が白い。

 「気温・・また下がってきたみたい・・」
 「空気がキレイだな・・」

 凍てつく寒さ。



 こんな夜は、時を刻むものはいらないような気がする。
 いちばんよく見えるのは、真夜中の午前2時ごろだという。

 だけど、きっと
 夜空が、
 星が、

 教えてくれる――――――。





 どれほどの時が経ったのか。
 体を軽く揺さぶられる感覚に、ようやく自分がまどろんでいたことに気づいた。
 「蘭、オメー、一度寝ちまったら、おきねえのに・・大丈夫か?」
 「う・・ん・・」
 「みてみろよ」
 いけない、せっかくここまで待っていたのに、寝てしまったら台無し・・。
 新一に促されるようにして、眠い目をこすりながら、空を見上げて、目が覚めた。

 「・・す・・すごい・・すごいよ、新一・・!」

 そっと、右手を。
 それから、左手も。
 空に向かって差し出した。

 まるで零れてくるような星たちに、手が届きそうな気がした。
 この世のものとは思えない。
 これは、夢なんかじゃないよね・・?

 ふたりきりで、星の光に照らされている、
 そんな気持ちになる。

 ゆっくりと、瞳を閉じて、降りそそぐ星の雨に願いを託した。





 帰り道、新一は思い出したように聞いてきた。
 「・・なあ。オメー、何か願い事、したのか?」
 「うん・・ひとつだけ、ね」
 でも・・。
 「お星さまに、聞いてみて」
 たぶん考えているはずの、もうひとつの質問より早く、にっこり笑ってそう言った。
 わたしの言葉に、新一はくすりと笑って、
 「・・そうだな」
 もうここからは見えない星に思いをはせるように、夜空を見上げた。





 わたしの願いはたった一つ・・だから。
 あなたの願いは・・。
 わたしの願いなのだから・・。



 それは、星降る夜の、素敵な夢。





FIN.

11/18/2001






>lyrics top