ひとりぼっちにさよなら





 「・・そんな顔、すんじゃねえよ」


 笑ってた。
 確かに、笑ってた。

 あなたが、何も心配することなく、
 ただまっすぐに、真実に目を向けられるようにと願って。

 でも、そんな言葉をくれるなら、
 私はどんな風に、あなたを見つめ返せば、いいのですか?

 どんなに笑ってみせても、こころの奥までのぞかれてしまう。

 それなら、いっそ、泣いてしまえばいいのですか?

 イカナイデ

 そう言ってしまっていいのですか?


 あなたの夢を壊す権利なんて、私にはないのに------。





 「・・そんな顔って・・どんな顔よ・・?」
 私は深いところに切ない色を隠したような、新一の瞳を捉えて軽く睨んだ。
 「オメー・・いつも・・」
 言葉を濁す。
 「・・だって・・。私が笑ってなきゃ、心配かけるじゃない・・」

 ほんとは怖い。
 離れるたび、またひとりになってしまいそうで・・・・・・。
 でも・・・・・・。

 「・・ほら。早く行きなさいよ・・」
 「・・蘭・・・・・・」
 「気にしないで。必要とされてるって、素敵なことじゃない」
 笑ってるでしょう?
 ちゃんと。
 信じてほしいの。
 ちゃんと、笑ってるんだから・・・・・・。

 
 いつも、余計なところまで、気をまわしすぎてるよ。
 そのくせ、
 肝心なことは鈍いのに・・。

 やっぱりちょっと、無理してるのかな・・・・・・。
 そんなことを思いながら、いつもと同じように、後姿を見送る。


 言えるわけないじゃない。
 だってそれは、あなたの重荷になるかもしれないのに。
 あなたのために・・・・・・。

 でも・・・・・・。
 私の気持ちは・・・・・・?

 ずっと、覆い隠したまま・・・・・・?

 角を曲がるまで、背中を痛いほど見つめていた。
 都合がよすぎること、わかってる。
 それでも、
 瞳だけで伝えられるのなら、どんなにか・・・・・・。

 行かないで・・。
 ほんとうは。
 行かないでほしいの・・・・・・。
 ひとりにしてほしくないの・・・・・・。



 ふいに、振り返って。
 ゆっくりと、新一は戻ってきた。

 「・・・・・・!?」

 瞬間。
 抱きすくめられる。

 あなたの腕に、すっぽりと包み込まれる自分の小ささが、言いようもなく切なかった。
 
 「・・どうしたの・・?」

 「・・忘れるなよ」

 ・・・・・・?

 「オメーはひとりじゃねえんだからな・・」


 うまく笑えなかった。
 でも、
 ひょっとして、こんな、本音のにじんだ笑顔のほうが、あなたは安心できるのですか------。



 
 抱きしめられた温かさが消えないうちに、帰ってきて。

 角を曲がって見えなくなっても、まだ見つめていた。


 ひとりじゃないことを確かめるように、
 ひとりきりで、
 あなたのぬくもりを、
 抱きしめながら------。






FIN.

短編、とっても久しぶりに書いたような気がします・・(笑)。久しぶりと言えば、蘭ちゃん視点の一人称も・・。ずっと書こうと思っていて、やっと書けたショートです。
たくさんのことを乗り越えたふたりなら、物理的に離れることがあってもきっと強い絆で結ばれているはず・・そんなことを考えながら書きましたv






>lyrics top